第4回:認知症の予防について
●目次
●入院すると、もの忘れが進むというのは、本当でしょうか。
●匂いなどの刺激は、認知症予防になるのでしょうか。
アルツハイマー型認知症では、嗅覚が低下することが知られています。そこで嗅覚を刺激(アロマセラピー)が、脳を活性化できないかとの研究があります。アロマセラピーは認知症の周辺症状に有効である上に、中核症状にも良い可能性が指摘されています。ラベンダーなどの心地よい香りは、心身をリラックスさせることは直感的にも理解できますよね。ただし認知症の発症を予防できるかは不明です。
●ボクシングやサッカーのヘディング等、頭を何度も打つと認知症になりやすいと聞いたことがありますが、本当でしょうか。
認知症の危険因子として、頭部外傷があります。頭部外傷により脳挫傷や脳出血を来たして脳機能が低下します。
また反復して頭部に外傷を受けることが多い拳闘家に出現する認知症があります。ボクサー、特にノックアウトが多かったボクサーでは、若年にもかかわらず、アルツハイマー型認知症と似た変化が出現することが知られています。
頭部に強い衝撃を受け続けることは避けた方が良さそうです。
●携帯アプリや算数ゲームで認知症の発症を抑えることはできますか。
認知症予防に運動療法が有効であることが証明されています。音楽や舞踊を組み合わせ、楽しみながら行う余暇活動にも効果が期待されています。これまで脳を活性化させると銘打った携帯ゲームや算数ゲームを行って、認知症の発症を予防できたとする報告はありません。
まず運動、食事の工夫、生活習慣病(高血圧や糖尿病)の適正な管理を試みてください。
●独居であるため、会話が少ないと感じており、認知症になりやすいと心配しておりますが、何かいい手立てはないでしょうか。
人との会話は脳の機能を維持する有効な手段です。また独居や配偶者が不在であることは、認知症の危険因子であると言う報告もあります
地域での社会活動に参加したり、デイサービスなどを利用して、人と話す時間を持つことをお勧めします。
外に出ることを嫌がる高齢者もおられますが、一度参加すると結構楽しんで行かれることが多いようです。まずは始めてみることです。
認知症になっても寝たきりにはなりたくありませんが、寝たきり予防のためにどんな生活をすればよいでしょうか。
わが国では認知症が急速に増加しています。しかし多くの認知症高齢者は地域で生活されています。つまり、寝たきりにならないことが大切です。認知症では中期から筋力が低下し、階段昇降や入浴に不安が生じてきます。筋力を維持して寝たきりを予防するために、運動を継続すること、良質なたんぱく質を十分摂取することを心がけてください。
晴れた日には30-50分の運動を!でも、くれぐれも転ばないように!
入院する際には、少なからず安静を強いられる原因があります。数週間ベッドで寝ていると、足の筋力が低下するのは高齢者ばかりではありません。こういう身体機能の低下を廃用症候群といいます。もの忘れの進行も廃用症候群の一つです。退院して通常の生活にもどると徐々に回復するものですが、実際には高齢者では、入院を契機として認知能が低下されることが多いようです。
肺炎や転倒を予防して、入院する機会をできるだけ少なくすることが大切です。